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[http://salondesm.com/about/column/292-g Gスポット大戦]のコラムにあるように、[[Gスポット]]が本当に存在するかどうかについての議論が延々と続いており、結着はついていない。論点は「'''解剖学的'''に独立した新しい器官・組織として[[Gスポット]]があるのかないのか?」である。[[Gスポット]]支持派は、「刺激すると[[潮吹き]]する[[性感ポイント]]が実際にあるのんだから、あるに決まっている。観察が足りないんだろう。」と考える。一方で、今のところ解剖学的、病理学的に[[Gスポット]]を定義できるような確たる証拠は実際にないようで、「[[オルガズム]]に達するかどうかは、わしらの知ったことではないが、解剖学的にないんだから、わざわざ変な名前をつけて、医学的に存在するようなことは言わんといてくれ」というのが[[Gスポット]]に否定的な人々の考えである。 | |||
===[[Gスポット]]支持派=== | |||
*最初に「[[Gräfenberg spot]]」という言葉で[[Gスポット]]という性感スポットがあると主張したのがカナダのダルハウジー大学のグループで1981年の学術論文上で症例報告の形で発表<ref>Addiego, F., Belzer, E.G., Comolli, J., Moger, W., Perry, J.D. & Whipple, B. Female ejaculation: A case study. ''J Sex Res'' '''17,''' 13-21 (1981).</ref>。「[[Gräfenberg spot]]」の刺激により[[前立腺液]]に成分の似た体液が[[尿道口]]から[[射精]]されること(いわゆる[[潮吹き]])も記述されている。 | |||
*「[[Gräfenberg spot]]」を「[[Gスポット]]」と略して一般の人々に知らしめたのが、ラダス、ウィップル、ペリーの3人が共著で書いた一般書。ラダス(Alice Kahn Ladas)は教育学位をもち心理療法の資格をもつ米国の女性セクソロジスト。ウィップル{Beverly Whipple}は米国のニュージャージー州立大学ラトガース校の名誉教授。心理生物学の博士号をもつ女性研究者。ペリー(John D. Perry)はフロリダ在住の博士号と心理療法の資格をもつセクソロジスト。 | |||
*フランスの泌尿器科医のフォルデ(Pierre Foldes)とブァソン(Odile Buisson)は、女性に指で膣オナニーをしてもらい、膣の周りの動きを超音波画像診断法で観察。[[クリトリス系]]が大きくなっているので、[[Gスポット]]は実は体内の[[クリトリス]]部分なのではないかと考察<ref>Foldes, P. & Buisson, O. The clitoral complex: a dynamic sonographic study. ''J Sex Med'' '''6,''' 1223-1231 (2009). </ref>。 | |||
*米国の美容性外科医、オスレンツキー(Adam Ostrzenski)は、老女の死体解剖からついに[[Gスポット]]に相当する器官を外科的に発見したと報告<ref name="#52">Ostrzenski, A. G-spot anatomy: a new discovery. ''J Sex Med'' '''9,''' 1355-1359 (2012). </ref>。 | |||
===[[Gスポット]]に否定的な人々=== | |||
*米国のペース大学心理学部のテレンス・ハインズは2001年に「存在を支持するデータが弱い」と批判し、「神話」にすぎないと批判<ref>Hines, T.M. The G-spot: a modern gynecologic myth. ''Am J Obstet Gynecol'' '''185,''' 359-362 (2001).</ref>。2013年には泌尿器科の医師と共著で、2012年のオスレンツキーの「Gスポット発見論文<ref name="#52"></ref>」を痛烈に批判<ref name="#51">Hines, T. & Kilchevsky, A. The G-spot discovered? Comments on Ostrzenski's article. ''J Sex Med'' '''10,''' 887-888 (2013). </ref>。 | |||
*イタリア性科学センターに所属する[[ヴィンセンツォ・ピュッポ]]博士は、その総説において[[Gスポット]]は解剖学的に該当器官が存在せず、[[エルンスト・グレフェンベルグ]]も[[Gスポット]]に相当するような発表はしていないので、[[Gräfenberg spot]]という名称は不適切だと書いている<ref>Puppo, V. Anatomy of the Clitoris: Revision and Clarifications about the Anatomical Terms for the Clitoris Proposed (without Scientific Bases) by Helen O'Connell, Emmanuele Jannini, and Odile Buisson. ''ISRN Obstet Gynecol'' '''2011,''' 261464 (2011).</ref><ref>Puppo, V. & Gruenwald, I. Does the G-spot exist? A review of the current literature. ''Int Urogynecol J'' '''23,''' 1665-1669 (2012). </ref> | |||
*イスラエルの神経泌尿器科キルチェブスキー(Amichai Kilchevsky)らは、膣内の神経分布を調べると、[[Gスポット]]に相当する領域に若干の神経分布の偏りが見られるが、[[Gスポット]]の存在を支持するまでのものではないと指摘。また、放射線によるイメージングからも相当する器官は観察されないので、現時点では[[Gスポット]]が「解剖学的な独立の存在として」あるとはいえないと結論<ref>Kilchevsky, A., Vardi, Y., Lowenstein, L. & Gruenwald, I. Is the female G-spot truly a distinct anatomic entity? ''J Sex Med'' '''9,''' 719-726 (2012).</ref>。 | |||
*ローマ大学の[[エマニュエル・ジャニーニ]]博士らは[[Gスポット]]代わりに[[クリトリス]]、[[尿道]]、[[膣]]がからまった部分を『[[クリトウレスロヴァギナル複合体]]』([[clitourethrovaginal complex]])と呼ぶことを提案<ref name="#86">Jannini, E.A., Buisson, O. & Rubio-Casillas, A. Beyond the G-spot: clitourethrovaginal complex anatomy in female orgasm. ''Nat Rev Urol'' '''11,''' 531-538 (2014). </ref>。 |
2016年8月20日 (土) 12:32時点における最新版
Gスポット大戦のコラムにあるように、Gスポットが本当に存在するかどうかについての議論が延々と続いており、結着はついていない。論点は「解剖学的に独立した新しい器官・組織としてGスポットがあるのかないのか?」である。Gスポット支持派は、「刺激すると潮吹きする性感ポイントが実際にあるのんだから、あるに決まっている。観察が足りないんだろう。」と考える。一方で、今のところ解剖学的、病理学的にGスポットを定義できるような確たる証拠は実際にないようで、「オルガズムに達するかどうかは、わしらの知ったことではないが、解剖学的にないんだから、わざわざ変な名前をつけて、医学的に存在するようなことは言わんといてくれ」というのがGスポットに否定的な人々の考えである。
Gスポット支持派
- 最初に「Gräfenberg spot」という言葉でGスポットという性感スポットがあると主張したのがカナダのダルハウジー大学のグループで1981年の学術論文上で症例報告の形で発表[1]。「Gräfenberg spot」の刺激により前立腺液に成分の似た体液が尿道口から射精されること(いわゆる潮吹き)も記述されている。
- 「Gräfenberg spot」を「Gスポット」と略して一般の人々に知らしめたのが、ラダス、ウィップル、ペリーの3人が共著で書いた一般書。ラダス(Alice Kahn Ladas)は教育学位をもち心理療法の資格をもつ米国の女性セクソロジスト。ウィップル{Beverly Whipple}は米国のニュージャージー州立大学ラトガース校の名誉教授。心理生物学の博士号をもつ女性研究者。ペリー(John D. Perry)はフロリダ在住の博士号と心理療法の資格をもつセクソロジスト。
- フランスの泌尿器科医のフォルデ(Pierre Foldes)とブァソン(Odile Buisson)は、女性に指で膣オナニーをしてもらい、膣の周りの動きを超音波画像診断法で観察。クリトリス系が大きくなっているので、Gスポットは実は体内のクリトリス部分なのではないかと考察[2]。
- 米国の美容性外科医、オスレンツキー(Adam Ostrzenski)は、老女の死体解剖からついにGスポットに相当する器官を外科的に発見したと報告[3]。
Gスポットに否定的な人々
- 米国のペース大学心理学部のテレンス・ハインズは2001年に「存在を支持するデータが弱い」と批判し、「神話」にすぎないと批判[4]。2013年には泌尿器科の医師と共著で、2012年のオスレンツキーの「Gスポット発見論文[3]」を痛烈に批判[5]。
- イタリア性科学センターに所属するヴィンセンツォ・ピュッポ博士は、その総説においてGスポットは解剖学的に該当器官が存在せず、エルンスト・グレフェンベルグもGスポットに相当するような発表はしていないので、Gräfenberg spotという名称は不適切だと書いている[6][7]
- イスラエルの神経泌尿器科キルチェブスキー(Amichai Kilchevsky)らは、膣内の神経分布を調べると、Gスポットに相当する領域に若干の神経分布の偏りが見られるが、Gスポットの存在を支持するまでのものではないと指摘。また、放射線によるイメージングからも相当する器官は観察されないので、現時点ではGスポットが「解剖学的な独立の存在として」あるとはいえないと結論[8]。
- ローマ大学のエマニュエル・ジャニーニ博士らはGスポット代わりにクリトリス、尿道、膣がからまった部分を『クリトウレスロヴァギナル複合体』(clitourethrovaginal complex)と呼ぶことを提案[9]。
- ↑ Addiego, F., Belzer, E.G., Comolli, J., Moger, W., Perry, J.D. & Whipple, B. Female ejaculation: A case study. J Sex Res 17, 13-21 (1981).
- ↑ Foldes, P. & Buisson, O. The clitoral complex: a dynamic sonographic study. J Sex Med 6, 1223-1231 (2009).
- ↑ 3.0 3.1 Ostrzenski, A. G-spot anatomy: a new discovery. J Sex Med 9, 1355-1359 (2012).
- ↑ Hines, T.M. The G-spot: a modern gynecologic myth. Am J Obstet Gynecol 185, 359-362 (2001).
- ↑ Hines, T. & Kilchevsky, A. The G-spot discovered? Comments on Ostrzenski's article. J Sex Med 10, 887-888 (2013).
- ↑ Puppo, V. Anatomy of the Clitoris: Revision and Clarifications about the Anatomical Terms for the Clitoris Proposed (without Scientific Bases) by Helen O'Connell, Emmanuele Jannini, and Odile Buisson. ISRN Obstet Gynecol 2011, 261464 (2011).
- ↑ Puppo, V. & Gruenwald, I. Does the G-spot exist? A review of the current literature. Int Urogynecol J 23, 1665-1669 (2012).
- ↑ Kilchevsky, A., Vardi, Y., Lowenstein, L. & Gruenwald, I. Is the female G-spot truly a distinct anatomic entity? J Sex Med 9, 719-726 (2012).
- ↑ Jannini, E.A., Buisson, O. & Rubio-Casillas, A. Beyond the G-spot: clitourethrovaginal complex anatomy in female orgasm. Nat Rev Urol 11, 531-538 (2014).